⑦「パワーハラスメント 知事のパワハラは職員の限界を超え、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。 執務室、出張先に関係なく、自分の気に入らないことがあれば関係職員を怒鳴りつける。例えば、出張先の施設のエントランスが自動車進入禁止のため、20m程手前で公用車を降りて歩かされただけで、出迎えた職員•関係者を怒鳴り散らし、その後は一言も口を利かなかったという。自分が知らないことがテレビで取り上げられ評判になったら、「聞いていない」と担当者を呼びつけて執拗に責めたてる。知事レクの際に気に入らないことがあると机を叩いて激怒するなど、枚挙にいとまがない。 また、幹部に対するチャットによる夜中、休日などの時間おかまいなしの指示が矢のようにやってくる。日頃から気に入らない職員の場合、対応が遅れると「やる気がないのか」と非難され、一方では、すぐにレスすると「こんなことで僕の貴重な休み時間を邪魔するのか」と文句を言う。人事異動も生意気だとか気に入らないというだけで左遷された職員が大勢いる。 これから、ますます病む職員が出てくると思われる。 ○(職員からの訴えがあれば)暴行罪、傷害罪
元西播磨県民局長は、本件文書において、齋藤知事の職員を威圧する言動全体を問題としたものであり、文書に列挙されているのはその例示であると解される。 実際、本件百条委員会は、上記の問題について、全職員を対象にアンケートを実施したが、これに対しては、本件文書で例示された以外にも齋藤知事の職員に対する言動を問題にする回答が多数寄せられた。本調査委員会は、独自にホットラインを開設し、名前を明らかにして情報提供することを求めたが、そこでも同様の情報が寄せられた。 そこで、本調査委員会は、アンケートとホットラインを通じて寄せられた情報についても、関連する事項若しくは本調査委員会が必要と認めた事項として、広くこれを調査することにした。 以下、調査の結果として認定した事実とこれに対する評価を述べる。
(1)元西播磨県民局長は、上記の例として、齋藤知事は、出張先で約20メートル歩かされたことに激怒したと指摘する。 これは、令和5年11月28日、加古郡播磨町所在の県立考古博物館において開催された「令和5年度東播磨地域づくり懇話会」の開式前に起こった事象である。
(2)同懇話会は,地域から、明右市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町の首長と議会関係者が、県から、齋藤知事、F、Xらが参加して、午後1時から午後2時30分まで行われた。
(3)考古博物館の南東部分には、博物館の玄関に通じる道(添付資料8において青色の点線で表示した部分。以下「歩行者用通路」という。)があるが、博物館とその周辺の地下には遺跡が存していたので、埋蔵物を保護するため、車両等の重量物の通行は禁止されている。考古博物館は、その旨を示すため、歩行者用通路の開始部分に車止めを設け、車両が侵入できないようにしている。
(4)東播磨県民局は、齋藤知事到着の際のロジ(ロジスティクスの略。兵庫県の職員等においては、会議や出張等の段取りや手配、移動経路等を差して使用されているようである。)について、秘書課から「知事の歩く距離はできるだけ短く」と要請されていたので、応えようとしたが、埋蔵物の関係はいかんともしがたく、以下の計画を立てた。そして、当日の会議を担当する企画部の計画課に対し、現場付近の図面を送って、県民局の意向を伝えた。 ア 公用車は図面で赤色の四角で囲んだ職員用の駐車場に停めてもらう。 イ X氏とF氏は、職員用の駐車場で知事車の到着を待つ。 ウ 齋藤知事到着後は、X氏とF氏が案内し、黄色で示した経路を歩いて来館してもらう。
(5)秘書課は、企画部計画課から連絡を受けて東播磨県民局の作成したロジを確認してこれを了承し、公用車は職員用駐車場に停め、齋藤知事には黄色の経路を歩いて博物館に向かってもらうこととした。
(6)当日、X氏とF氏は、齋藤知事を迎えるため、12時45分ころ博物館の外に出たが、職員用駐車場には齋藤知事の公用車と同じアルファードが駐車していた。2名は、既に齋藤知事が到着したかと思い、出迎えが遅れたと焦る気持ちになって、職員用駐車場に停まっているアルファードまで齋藤知事を迎えに行くか、このまま玄関前で待つかを協議した。そして、齋藤知事が車から出てこないのは何か事情があるからかもしれないと考え、そのまま玄関前で様子を見、齋藤知事が車から出てきた時点でそちらに向かい、知事を案内することにした。
(7)しかるところ、午後1時の2、3分前、別のアルファードが博物館に向かって来るのが見えた。X氏とF氏は、職員用の駐車場に停まっていたのは別の車で、今度到着したのが齋藤知事の乗る公用車であると理解した。そして、職員用の駐車場に向かおうとした。
(8)ところが、到着した公用車は、職員用駐車場ではなく、歩行者用通路の方向に向かい、車止めの前で停車した。X氏とF氏は、あわてて公用車に向かったが、齋藤知事は、車から降りてきて車止めを持ち上げる仕草をし、「なんでこんなところに車止めを置いたままにしているのか」と激しく叱責した。X氏は、語勢の強さに驚き、あわてて車止めを外し、通路の端にこれをよけた。しかし、齋藤知事は、更に、「それで車が通れると思っているのか」と述べて、X氏を叱責した。X氏は、その言葉を受け、車止めを通路の外に移動させた。齋藤知事は、その間に、F氏とともに、歩行者用通路を通って博物館玄関に向かった。X氏も車止めを外してからその後に従った。
(9)F氏は、齋藤知事がロジに厳しい見解を持っていること、怒ることはあるが、多くの場合、後に引かないことを知っていたので、冷静に対応することができた。 一方、X氏は、齋藤知事が突然怒り出すことがあるとの噂は聞いていたが、自身が直接叱責を受けるのは初めてであった。最初は、なぜ齋藤知事が怒っているか理解できずに驚き、次には、興奮した齋藤知事が冷静を取り戻して会議に臨めるか、自分が上手に場を取り持つことができるかと不安になった。
(10)会議は、参加者が冒頭で場を和ませる発言をしたこともあり、順調に進み、有益な意見交換をすることもできた。
(11)会議終了時、運転手と随行の秘書課職員は、車止めが横にのけられたので、歩行者用通路に車を乗り入れ、玄関前に公用車のアルファードを横付けした。齋藤知事は、玄関を出てすぐに公用車に乗り、歩行者用通路を通って帰途についた。
(12)上記の事象は、東播磨県民局内では、当日の会議に出席していた一般職員も知るところとなった。他の県民局長の多くも、その後間もなく当該事象を伝え聞いた。また、その後行われた県民局長、県民センター長会議においても、ロジ対応の注意点として、全員のいる場でその話が話題となったので、県民局長全員がその事実を知ることとなった。そして、同じような事象が起こらないようロジに気を付けなければならないとの認識が共有された。この出来事は、考古博物館で現場を見た職員や、県民局長からロジに気を付ける必要があると訓戒を受けた一般職員らを通じ、多くの職員がその事実を知ることとなった。